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高森明勅
2014.8.17 04:34

8月15日、公式ニコ生で靖国神社を語る(後編)

ドワンゴの担当プロデューサーとしては、
戦後の靖国神社だけを見ていたのでは、
戦後の問題についてさえキチンと判断できない、
という考えがあったのでは。

ーと勝手に臆測した。

心優しい次男坊辺りは、ニコニコ生放送だと、
ネット上で悪口雑言を投げつけられるのではないか、
と心配してくれたようだ。

だが、そんなことは屁でもない。

これまで靖国神社についてよく知らなかった人たちに、
少しでも接点を広げられたら有難い。

そう思って、引き受けた。

神社当局のご配慮で、クーラーの利いた室内でも、
私が希望した神池庭園でも、好きな方で撮影できることに。

しかし、せっかく靖国神社の境内で撮影するなら、
やはり屋外の方が相応しいだろう。

かくて庭園の池の畔で撮影開始。

アナウンサーの彼と私が並んでベンチに座り、
カメラには私だけが入る構図。

冒頭、アナウンサーから視聴者に靖国神社の起源はいつか?と質問。

1応仁の乱後〜5太平洋戦争後までの5つの選択肢から選んで貰う。

正解は「明治維新後」という設定。

驚いたのは、即座に回答が来て、
どの選択肢に何%
の回答があったかが一瞬で分かること。

ニコニコ生放送、侮れない。

正解は54%だった。

これは、私が予想したより高い正当率。

しかしその一方で、靖国神社が戦後に創建されたという回答も、
5%以上あった。

私のコーナーがスタートした時点で、視聴者は6000人程度。

靖国神社の前身、東京招魂社が何故、明治「2年6月」

創建されたのか。

「東京」「招魂社」という名前の由来。

鎮座の場所について当初、京都の東山を予定していたのに、
東京の上野→九段の現在地へと移った理由。

明治「12年」になって靖国神社と改称され、
別格官幣社に位置付けられた背景。

「別格」官幣社というと一見、格式が高そうだが、

実はそうではない。

当時の神社のランクでは、上から7番目位。

にも拘らず、皇室は靖国神社を重く扱われた。

こうしたアンバランスが生まれたのは何故か?

夏目漱石の『吾輩は猫である』に描かれた意外な靖国神社観。

等々。

私自身も普段、余り改めて語る機会がないテーマを、
丁寧に取り上げた。

質問役のアナウンサーとは妙に波長が合って、話し易い。

これもプロの技か。

8月15日には、境内にある軍犬慰霊像や戦没馬慰霊像の足元にも、
ドッグフードだのニンジンだのペットボトルだのが、
参拝者によって供えられる。

いかにも日本人らしい優しさの発露。

この日、参拝される方は、そうしたところにも目を止めて欲しい、
と述べた。

最後に視聴者から質問を受け付け、簡単に回答。

こんなことも、造作なくできてしまう。
台本的には45分程の予定が、あっという間に1時間超過。

ニコ生だからこそ許される柔軟さ。

途中、視聴者から度々、強い日差しの中で語り続ける私に、
「水分を補給して」
と優しい書き込みを頂いた。

嬉しい心配り。

これも双方向のニコ生ならでは。

別に喋りのプロでもない1人のオッサンが、
ベンチに座って、
まるまる1時間、アナウンサーとの掛け合いで、
ただ語るだけ。

番組としてはかなり単調な、
詰まらないものになってしまったのではないか。

と心配していたら、締めくくりに、
運営サイドで当方への断りもなく、さっさと視聴者に評価を求める。

1凄く面白い、2面白い、3普通、4面白くない、5全く面白くない、といった5段階評価。

それまでやったことへの評価が、その場で瞬時に下される。

しかも、その結果がそのまま視聴者にも示される。

これまた普通のテレビにはない、
出演者にとってある意味でキツいやり方。

結果は、最高評価の1「凄く面白い」が87%、2「面白い」が7%、
残りが3「普通」
で、4,5のマイナス評価はゼロ。

現場にいたプロデューサーもディレクターも、
びっくりかつ大喜び。

勿論、お世辞混じりで、割引いて聞く必要があるだろうが、
「これはかつてない、
驚異的な数字です。
お話は、我々も知らなかったことだらけで、
メチャクチャ面白かったです」と言ってくれた。

アナウンサーのN氏も興奮気味。

しかも、視聴者の数も1万9000人位まで伸びたという。
無論、
地上波のテレビの視聴者の数とは比べものにならない。

それでも娯楽性など皆無なのに、これだけの人々が熱心に、
最後までお付き合い下さったことに、感謝。

この仕事を引き受けた一応の責任は、
何とか果たせたのかも知れない。

それにしても今回のことは、ちょっとおどけたネーミングながら、
ニコニコ生放送というメディアの可能性を感じさせられる
経験でも
あった。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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